日本とカナダの違い:謙遜 vs Fake it until you make it!

文化・コミュニケーションの違い

カナダに移住するに当たって一番不安だったのが、カナダの職場で自分の能力やスキルが通用するかと言うこと。
おそらく海外に出ようと思っている皆さんが心配していることだと思います。

カナダに来てから周りの人に「なんでカナダに来ることにしたの?」とよく聞かれます。
その理由の一つが、人として、そしてキャリアの上でも成長を続けたいと思ったから。この成長は、ハード面の「スキル」だけでなく人間力も含めてのことです。

海外でキャリアを積んだ人は日本で問題なく(日本語力を除き)仕事ができるのに、日本でしか仕事経験がないと海外に出るのが難しいと言うイメージありますよね?そしてよく「海外で通用する人材に」などと言うキャッチフレーズを見かけます。
各国文化は様々なのでどの国の基準が良いと言うわけではないのですが、「日本にいても、海外のどの国行っても働くことができ、人生を楽しめるような人間になりたい」と思ったのです。

海外で通用するようになるにはどうすればいいのか。英語力はよく取り沙汰されますが、本当に英語だけなのか?
カナダに来てみて、カナダ人と働いてみて感じたコミュニケーションや文化の違いを第一編として紹介したいと思います!

◉日本の謙遜は海外では受け入れられない!?
◉すぐに謝らない


日本の謙遜は海外では受け入れられない!?
日本では「謙遜」することは美しいこと(当たり前のエチケット)として捉えられます。
お客さんと話す時は去ることながら、上司や先輩と話す時、そして時には気の知れた友人と話す時でさえ相手を上に置き、自分を謙(へりくだ)って会話をしますよね?「私はまだまだ未熟者なのでご容赦ください」「私はまだ英語が下手なのでうまくできるかわかりません」「〇〇先輩に比べたら全然この仕事がうまくできません」と自分を否定することによって相手を敬うのは日常のことです。そして、時には身内や家族も「内」として謙り「うちの娘・息子はこの程度しか勉強ができなくて〜」などと否定する言葉もよく耳にします。

日本で働いてきて自分を謙るのが当たり前のように染み付いていたので、カナダの学校や職場でもこの「謙遜」を続けていました。「他のクラスメイトのように芸術の才能がないので全然うまくないのですが〜」「まだまだカナダでの経験は未熟なので〜」や「英語ができなくて理解できなかったら申し訳ありません」常に謙ります。

ところが、数ヶ月経ってみてこれはカナダで好印象を与えるどころか、ネガティブな印象を受けることに気がつきます。
相手を尊敬して褒めることはあっても、自分を謙ってネガティブに否定することはしません。

それは仲のいいとても芯の強い女性の同僚に言われたこと。「あなたはよく謝るし、自分はこんなことが苦手って言うけど、もっと自分ができることをはっきりアピールした方がいいよ!」
確かに数ヶ月間カナダの職場で会議や会話を見ていて、自分のことを謙遜する人を見たことがありません。個人的に(プライベート)な場で、悩みや弱みを相談することはありますが、カナダで謙ることは「自分に自信がない」と言っていることになるので「信頼できない」「頼りにできない」と思われてしまい兼ねないのです。

もちろん、カナダで謙虚さが大事でないと言っているのではありません。謙虚であること(Humbleness) は日本と共通してカナダ、カナダ以外の国でも大事なことです。
ではカナダではどう言う風に同じ表現をするかというと、

例)「私はまだまだ未熟者なのでご容赦ください」ではなく
「今日の会議発表は初めての挑戦なのでみんな応援してくださいね!」
(これによって、まだ経験が多くないことが伝わり、同時にみんな応援してくれます)、

例)「今日の会議は噛んでしまってうまくできず申し訳ありませんでした」ではなく
「何回か発表中噛んじゃったけど、裏では実は5つのことをマルチタスクしていて脳はフル回転していたんだよ」
(失敗を逆に利用して場を和ませ、また仕事の大変さをしっかり説明して共感を得ます)

例)「英語ができなくて」ではなく
「私の得意言語は日本語、日本について質問があったらなんでも聞いてくださいね」
(英語が母国語でないことは伝わる、そしてできないことではなく、できることにフォーカス)
ちなみに「英語ができない」はむしろ言及しない方が良いです。カナダは移民の国、英語が母国語でない人の方が多いので、発音や間違いなどは誰も気にしていません。

できないことではなく、「できること」にポジティブに焦点を当てた言葉遣いになります。

カナダのコミュニケーションは、とてもダイレクトで正直です。
「〇〇が苦手なの」と事実を話すことはあっても、尊敬を表す(建前)ためだけに自分を謙ってネガティブに否定することはしません。
人を「否定する」と言うことが失礼なのと同じで、自分を否定するのも自分に失礼だと思いませんか?
また本当に意図していないなら、お世辞なども(建前)不要です。

日本で育つと、丁寧であること(Politeness)は、人に優しくすること(Kindness)とつい履き違えてしまいそうになりますが、カナダではこの2つは切り離されていて、丁寧(Polite)さよりも、人に優しく(Kind)あることが尊重されていることを学びました。
「NO」と言えない日本人とよく言いますが、丁寧でありたいと思うが故のことなのではと思います。
私も「丁寧」を心がけるのではなく、自分が本当に思ったこと、感じたことを正直に言葉にしようと努力しています。

(Twitterより:Adam Grant)
Politeness is not the same as kindness.

Being polite is saying what makes people feel good today. Being kind is doing what helps people get better tomorrow.
In polite cultures, people withhold disagreement and criticism. In kind cultures, people speak their minds respectfully.

https://twitter.com/AdamMGrant/status/1459535163273138176?s=20


すぐに謝らない
よく、アメリカとカナダとの比較で「カナダ人はよく謝る人種」だと聞きます。
が、カナダ人がアメリカ人と比べて10倍くらいよく謝るとすれば、日本人はカナダ人の100倍くらい謝るんじゃないかと思います。
カナダ人が謝る回数が少ないのは、「すみません」「失礼しました」程度のこと、謝るよりもニュアンスの軽い「Excuse me」になり、そして自分に非があって真摯に謝罪する時にのみ「I’m sorry」を使うからです。
実際私もそうでしたが、日本は「お客さんが100%正しい」と言う理念があるからか、謝れば済む(?)と言う考えがあるからか、謙遜の意図もあるのかもしれませんが、日本人はすぐに謝ります。「申し訳ありません」が乱用されているようにさえ(?)感じます。

謝る行動に関して、カナダでは悪いことと捉えられることはありませんが、謝りすぎるのはやはり良いこととして受け入れられません。Sorryと言う言葉も、上記の謙遜のケースと同じで、本当に謝罪をしたい時に絞って使うことが大事です。

例)電車が遅れた
日本なら「遅延のためご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」と車掌が謝りますが、カナダでは「こう言った事情で遅延が発生しています」と言うアナウンスのみ

例)スポーツでプレーを失敗した
日本なら「ミスってごめんね」となりますが、カナダでは全力を尽くして挑戦したんだから、と謝ることはしません

例)質問されて答えを知らない
日本なら自分が回答できないことを謝りますが、カナダでは他の人に聞いて、と促すことはあっても謝罪はしません

例)会議資料に誤字があった
日本なら謝りますが、カナダでは誤字程度では謝りません

例)提出期限に資料が間に合わなかった
驚くことに、日本では仕事が間に合わなかったなどとなれば平謝りとなりますが、私の仕事経験では、外部業者がこちらの依頼した期限に仕事が間に合わなかった時、事情を説明してきましたが業者は一言も謝りはしませんでした・・・


Sorryと言う言葉、仕事の場では更に気をつけて使う必要があるかもしれません。
カナダでは謝る=自分の非を認めると言うことになり、責任を負うことになるからです。
アメリカの訴訟などでも、謝った=自分に非があったと認めることと言いますが、カナダも似たような考え方なのだと思います。
自分が責任を取れる場合は謝っても良いのですが、そうでない場合は違う言葉を選んで説明する必要があります。

では逆にどう言った状況で謝るのかと言うと、
道でぶつかってしまった、時間に遅れてしまった、知らずに他の人の席に座っていた、ある時間に送るはずのメールが送れていなかった、など自分の行動によって人に迷惑をかけてしまった時、と言うのが正しいでしょうか。

そして私の仕事の失敗経験を一つ。
同僚の会議発表をファシリテーターとしてサポートした時のこと。
チャット上で質問を受けながら、挙手で来る質問と同僚の回答をマネージしていたのですが、慣れない英語で読む・聞く・話す・人にふるをマルチタスクしながらのことだったので、それはそれは・・・ズタボロ無惨なファシリテーションになってしまいました(;*△*;) 
罪悪感もあり、会議の最後に会議参加していた同僚に「ファシリテーションが下手でごめんなさい!」とつい謝ってしまったところ、その後すぐに上司から呼び出され、こう言われました。
「あなたがリードする立場だったんだから謝ったりしてはダメ!Fake it until you make it!」
(本当にできるようになるまで、偽ってでもできるように振る舞いなさい)

確かに、下手でも自分のベストは尽くしたので、私に非があったわけではないですよね。
日本人の私としてはついつい簡単に口にしてしまう「I’m sorry」ですが、今では本当に必要か?と自分に言い聞かせて無闇に謝らないように気をつけています。

最後に
日本は独特な文化や価値感が成り立っていて魅力がある国。ですが価値観の違いが壁となって海外での仕事や生活にチャレンジできなくしてしまうのはとてももったいないことです。
日本人は英語が苦手なのが問題と言われますが、それ以外にも(それ以上に?)海外でうまく「コミュニケーション」するコツがたくさんあると思います。コミュニケーションはハードスキルではなく説明するのも難しいのですが、少しでも日本と海外との壁が低くなるように、私なりの発見やカナダに来て変えた・変わったことを紹介していきます。

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